SUPPING CULTURE REVIEW

批評同人誌『PENETRA(ペネトラ)』のメンバー。ジャンルフリー、ネタバレありです。https://penetra.stores.jp

2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

渡辺あや(2014)『ロング・グッドバイ』

最終話でいっきに射程が伸びた。正力松太郎がモデルの原田平蔵(柄本明)は新聞資本のテレビ局、自民党政治、原発の積極推進という戦後日本の両義的な表象を一手に引き受ける存在。その正力=原田の強大さに、増沢磐二(浅野忠信)のもつ友情・信頼・仁義と…

家族をめぐるイデオロギー対立のゆくえ ―坂元裕二『最高の離婚Special 2014』

昨年1~3月期に放映されたドラマ『最高の離婚』について、私は以前、次のように書いた。『それでも、生きてゆく』の脚本家が、これほどすっきりしたハッピーエンドを認めたことに、釈然としない思いは残る。(略)今回は視聴者と幸福な関係を取り結んだよ…

よみがえる「砂の女」 —小山田浩子(2013)『穴』

一人称小説である。主人公の「私」は非正規雇用で会社勤めをしていたが、夫の転勤で同じ県内にある彼の実家のとなりに引っ越すことになった。「私」はなにを語るにも一歩引いていて、強い関心を持っている対象もなければ、人知れず欲望をためこんでいるわけ…