SUPPING CULTURE REVIEW

批評同人誌『PENETRA(ペネトラ)』のメンバー。ジャンルフリー、ネタバレありです。https://penetra.stores.jp

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

綿矢りさ(2013)『大地のゲーム』

綿矢りさがこんな作品を書く日がくるなんて想像もしていなかった。新作の舞台は震災を契機に学生たちが住みつくようになった大学のキャンパス。といってその地震は、すぐに思い当たるところの東日本大震災ではない。登場人物の父親による、「おれたちの昔経…

宮沢章夫(2013)『夏の終わりの妹』

いったいなぜこんなものを作ろうと思ったのか。アートにしてもエンタメにしても、そうした問いに駆られることは少なくない。そうした疑問はいくつかの水準に分かれているようだ。ひとつには、そもそもの創作の発端を問うもの。作家にはどんな動機があったの…

燃える箱庭 松家仁之と宮崎駿の想像力

『崖の上のポニョ』以来5年ぶりとなる宮崎駿監督作品は、ポール・ヴァレリーによる詩の一節で幕を開ける。実在した人物である堀越二郎。彼が試行錯誤を経て零式艦上戦闘機(通称・ゼロ戦)の設計に成功しながらも、押し止めようのない時流の中で敗戦を迎え…