SUPPING CULTURE REVIEW

批評同人誌『PENETRA(ペネトラ)』のメンバー。ジャンルフリー、ネタバレありです。https://penetra.stores.jp

DRAMA

『山田孝之の東京都北区赤羽』×『テラスハウス クロージング・ドア』

池袋HUMAXシネマズで『テラスハウス クロージング・ドア』を観てきた。公開からしばらく経った平日夜の回ということもあり、人の入りはまばら。劇場のエレベーターに乗った時点でうすうす予感していたが、ひとりで来たのはどうやら自分だけのようだ。た…

坂元裕二(2014)『モザイクジャパン』

都内の証券会社をリストラされ故郷に帰ってきた常末理市(永山絢斗)。町はギャラクシーズというAVメーカーが進出してきたことで雇用が生まれ、にわかに活気づいていた。自身もギャラクシーズで働くことになった理市は、社長の九井(高橋一生)にこう告げ…

山田太一「よろしくな。息子」(TBS系『おやじの背中』第七話)

第七話。毎週リアルタイムで作品に接している視聴者であれば、そろそろ飽きが生じてくるタイミングかもしれない。序文で書いたような感動のインフレーションも起きてくる。ありきたりな展開では物足りなくなってくるのだ。何か、別のものを。山田太一はそん…

橋部敦子「父の再婚、娘の離婚」(TBS系『おやじの背中』第六話)

私はいまのところ結婚していないし、子どもを持ったこともない。これからそういう選択をするかどうかもわからない。けれど、もしいつか子を授かり育てることになったとき、これだけは絶対に言うまいと心に決めている言葉がある。それは、あなたのためだから…

倉本聰「なごり雪」(TBS系『おやじの背中』第三話)

映像制作には「ヒッチコックの法則」という決まりごとがある。カメラフレームに占める対象の大きさが、その時点における対象の重要性を示す、というシンプルな法則である。対象は人物に限らない。第三話「なごり雪」の場合、それは耳だ。ドラマは小泉金次郎…

脚本家たちのバトルロワイヤル —TBS系『おやじの背中』全話レビュー 序文

日曜劇場『おやじの背中』は、十人の脚本家による一話完結一時間のオムニバスドラマである。かつて日曜劇場は民放唯一の単発一時間ドラマだった。それが連続ドラマ枠に替わったのは一九九三年のこと。さまざまな事情があったのだろうが、ひとつには、ある回…

渡辺あや(2014)『ロング・グッドバイ』

最終話でいっきに射程が伸びた。正力松太郎がモデルの原田平蔵(柄本明)は新聞資本のテレビ局、自民党政治、原発の積極推進という戦後日本の両義的な表象を一手に引き受ける存在。その正力=原田の強大さに、増沢磐二(浅野忠信)のもつ友情・信頼・仁義と…

家族をめぐるイデオロギー対立のゆくえ ―坂元裕二『最高の離婚Special 2014』

昨年1~3月期に放映されたドラマ『最高の離婚』について、私は以前、次のように書いた。『それでも、生きてゆく』の脚本家が、これほどすっきりしたハッピーエンドを認めたことに、釈然としない思いは残る。(略)今回は視聴者と幸福な関係を取り結んだよ…

最高のレクイエム ―坂元裕二が『最高の離婚』で葬送したものたち

関連エントリ:家族をめぐるイデオロギー対立のゆくえ —坂元裕二『最高の離婚Special 2014』 『最高の離婚』の制作がアナウンスされたとき、まず目を引かれたのはキャスティングの妙だった。尾野真千子と真木よう子といえば、映画『外事警察 その男に騙され…